インプラントを打つとMRIは撮れないの?

塚口オオマチ歯科・矯正歯科の院長、歯科医師の大間知です。
最近MRI撮影を受けられた患者様によく聞かれる事があります。
「インプラント治療を受けると、MRI検査ができなくなるんですよね?」
この質問を聞かれる度に
「なぜそういう話になるのかな??」
と疑問しかなかったのですが、その疑問が解決しましたのでご報告させて頂きたいと思います♪
ここ数年健康に関する関心が高まっています。
特にコロナが蔓延してから以降、健康に関しての意識が高まっていると感じます。
何を隠そう僕も健康に関する意識が非常に低かったですが、このコロナ蔓延で色々な事を考えさせられ、かなり健康に対する意識が上がりました。
そして、健康の関心が高まる中でインプラントの需要も増えました。
当院でも去年は100本近くのインプラントを打つ機会がありました。
ただ、同時に健康への関心の高まりにより健康診断の需要も増えたのか、MRI撮影を撮る患者さんが増え、MRI撮影を撮る患者さんから
「先日MRI撮影をした時にインプラントが入ってますか?と聞かれたんですが、インプラント治療を受けると、MRI検査ができなくなるんですよね?」という質問を受ける事が多くなりました。
そこで色々な先生になぜそのような見解になるのかを聞いてみました。
インプラント専門でやっている先生にも聞いてみましたが、「それは単なる噂ですので気にしなくて良いです」とだけ言われ、「そうなのかな♪」と思う反面、少し気になっていました。そこでさらに色々な先生に聞く中で出てきた見解をご紹介させて頂きます。

そもそもMRI検査とは?

MRI検査は主にがんの検査で使われます。正式名称を「Magnetic Resonance Imaging」といい、強力な磁石と電波によって発生する磁場を利用して、内臓の画像を撮影する方法です。放射線を利用しないので被爆の心配もなく、CT検査よりも鮮明に撮影できる方法だといわれています。
ただ、非常に大きな音がする事や、時間がかかる点はデメリットとして挙げられます。併せて、金属類を身に付けているとMRIの撮影に悪影響が出るため、すべて外してからの撮影が基本です。そのためペースメーカーや人工内耳などの金属製の医療機器を体内に埋め込んでいる場合は、MRI検査が受けられません。
また、磁場が強力なため、入れ墨やマスカラをしている場合にやけどの可能性があったり、MRI検査は狭い空間に横になったままで行うため、閉所恐怖症の人には難しい事もあります。
つまり、インプラントを打った患者さんがMRI撮影を出来ないと思われた理由は、インプラントをペースメーカーや人工内耳などと同じ金属という理由から起きた勘違いかと思われます。
そして、インプラントしているとMRI検査できないと言われる他の理由として、インプラントの定義自体の問題も考えられました。
インプラントとは、医療器材を人の体に埋め込む総称です。歯医者さんで打つインプラント以外にもインプラントと呼ばれるものは何個かあります。
  • 心臓ペースメーカー
  • 人工内耳
  • 神経刺激装置などの電子機器
  • 人口関節
  • 美容目的で入れるシリコン
などです。
このうち心臓ペースメーカー、人工内耳、神経刺激装置などの電子機器が体内にある場合は、MRI検査ができません。
MRIは強力な磁気を用いて撮影しますので、磁気に反応する金属が体内に入っていると、撮影が困難なだけでなく死亡事故につながる可能性すらあるからです。
MRI検査で問題がある金属の特徴は、簡単に言えば磁石にくっつくかどうかの違いです。
しかし、ほとんどの歯科用のインプラントを含むその他のインプラントは、非磁気性金属なのでMRI検査も可能です。
当院で使用しているインプラントは「チタン」を使用しており、チタンは磁力がないため磁石にくっつかないので、MRI検査は受けられます。
また、金属によっては強力な磁場に入ると高熱を発することもありますが、「チタン」はMRI検査を受けても問題がないですし、ペースメーカーや人工内耳のように異常をきたすこともありません。
歯科用インプラントすべてが「チタン」でできているわけではありませんが、現在当院で採用しているインプラントは、「Biomet 3i」という会社のもので、アメリカでシェア第3位のインプラントメーカーの商品を使っています。
インプラントメーカーは日本国内だけで30社、世界全体で見れば100社以上存在すると言われています。一般的に採用されているインプラントメーカーは数社に限られますが、ごくまれにあまり聞きなじみのないメーカーのものを採用している場合もあります。信頼性がないわけではありませんが、ものによってはチタンではないものを使用している場合も考えられるので注意が必要です。
もし、チタン以外の磁力に反応するインプラントを採用している場合、強力な磁場の影響で金属部分が発熱する可能性があります。その発熱によってやけどをしてしまう可能性があり、非常に危険です。医療用インプラントであるペースメーカーを使用している方がMRI検査を受けられない原因のひとつがこれです。
他院でインプラント治療をされた方はどんな金属を使用したインプラントなのかを確認することをお勧めします。
さらに少し難しい話をすると、MRIは強力な磁場で身体の水分を振動させ、それで影を作って撮影をするようにできています。しかし、金属が存在すると、それらが磁場に反応してしまい、うまく撮影できずに影が残ったりノイズが映りこんだりしてしまう可能性があります。最悪の場合、MRIの機械そのものが壊れてしまい、多額の損害を被らせてしまう場合もあります。
時々ちまたで「格安インプラント」を売りにしている歯医者さんも存在しますが、そういった歯科医院でのインプラントは少し気をつけた方が良いかもしれませんね。
物自体の信頼性ももちろんですが、治療器具の消毒や滅菌なども重要です。
インプラントはどうしても高いので、格安で済ませたい方もいらっしゃるとは思いますが、安全性が証明されていないものも残念ながら存在しますのでご注意下さい。
安心できる歯科医院で、信頼性の高いインプラントを使ってもらうようにしましょう。
ただ、中には一部例外のインプラントもありますので、注意が必要です。

・インプラントオーバーデンチャー

インプラントオーバーデンチャーとは、インプラントの上に入れる入れ歯のことです。
インプラントオーバーデンチャーの中には、埋め込んだインプラントの先に磁石を取り付けてから入れ歯を入れるものがあります。
磁石はMRI検査では故障の原因になったり、画像の乱れにつながったりします。
当院が採用しているインプラントオーバーデンチャーのシステムは磁石を使用せず、ロケーターというものを使用していますのでMRI検査は可能です。現在インプラントオーバーデンチャーが入っている方は、もしもの時に家族にも知らせておく必要もあるので、施術してもらった医院に確認しておく事をお勧めします。

・医療用インプラント

前述の通り、歯科インプラント以外にも医療用のインプラントが存在し、心臓・整形外科・美容などさまざまな場面で使われています。
これら医療用インプラントを埋め込んでいる場合は、MRI検査の前に主治医と相談する必要があるでしょう。
採用される素材はさまざまです。鉄や銅などの人体に悪影響を与えるようなものはないものの、MRI検査では悪影響を及ぼす可能性のある金属の場合も否定できません。もし、知らないまま、確認しないままにMRI検査を受けてしまうと、MRI本体を壊してしまうことも考えられます。また、医療用インプラントの発熱などでやけどや重篤な故障につながる可能性も考えられます。十分に注意しましょう。
ただ、医療用インプラントも最近のものはMRIが受けられる素材でできていることもありますので、自己判断せず主治医の先生にご確認下さい。
インプラントにチタンが採用されている理由
インプラントにチタンが採用されている理由はMRI撮影を可能にする為ではありません。
代表的なものは次のとおりです。
・顎の骨と接合しやすい(親和性が高い)
・金属によるアレルギー反応が出にくい
・耐久性が高い
つまり結果的にMRI撮影ができるというメリットになっただけです。
チタンは人体との親和性(生体親和性)が高い事が特徴ですが、一部の金属アレルギーの方の中にはチタンでもアレルギーがでる患者様もいるそうです。(実際には現在までお会いした事はございません。)チタンにアレルギー反応が出る方はかなり稀で、もしアレルギー反応が出るのであれば他の金属にもアレルギー反応を起こす可能性が高いので、金属アレルギーが心配な方にはアレルギー検査を受けて頂いています。
インプラントはCT撮影も原則受けられます
よく勘違いされるものに、CT検査があります。
どちらも身体の内部を断面で撮影できるもので、違いがあまりよくわからない方も多いと思います。
CT検査は放射線を使用した撮影方法で、被爆リスクがある代わりに、立体的に撮影したい部分を映すことができます。
インプラント治療の前は、顎の骨の状態を確認するために必ず撮影されるものです。
CT検査はインプラントの有無や使用している素材にかかわらず撮影が可能です。
なお「被爆リスクがある」と説明しましたが、当院で使用するCTはデジタルレントゲンですので、放射線はごく微量です。
昔一般的に使われていたフィルムでのレントゲンに比べて1/16の放射線量ですので、過度に心配する必要はありませんし、万が一に備えて放射線を遮断する特殊エプロンを使用します。
妊娠中でも受けることができますが、ご心配される方が多い為当院では緊急性がない場合は産後に撮ることをお勧めしています。
インプラントが原因でMRIを断られたら?
病院や放射線技師さん、主治医の先生によってはインプラントを勘違いしているために「MRI検査ができない」といわれる事もあるそうです。
そんな場合には、次の3つの方法で対処および確認をしましょう。
  1. チタンであることを説明する
  2. 上の被せ物だけ外してもらう
  3. まずは主治医の歯科医師にご相談を
1. チタンであることを説明する
年配の医師に特に多い傾向にありますが、医療用インプラントがMRI検査はできないと考えていることから、歯科インプラントもMRI検査ができないと思い込んでいる医師もいます。前述のようにインプラントの中には、MRI検査で悪影響が出るものも含まれているため、ある意味仕方のない勘違いかもしれません。
もし、当院でインプラント治療された患者様のように、インプラントがチタン製で問題なくMRI検査が受けられると言い切れる場合は、医師に「チタン製です」と伝えてください。医療現場ではチタンの信頼性が高く、安全性も保障されていますので、年配の医師でもチタンが安全であり、磁力を持たないことは知っていると思われますので、特に問題なくMRI検査を受けることができるようになると思います。
2. 上の被せ物だけ外してもらう
「インプラントが入っているとMRI撮影出来ない」といわれた場合は、インプラント治療を受けた歯科医院で上の被せ物を外してもらえば基本的にはMRI検査を受けることができます。仮に主治医の先生から「インプラントを外してきてほしい」と言われても、すべて外す必要はないのでご安心してください。そして土台ごと外す事は基本的に不可能です。MRI検査後には、もう一度上の被せ物を設置してもらえれば問題ありません。

3. わからない場合は必ず歯科医師に相談を

もし自分の顎に埋め込まれているインプラントがチタン製かわからない、あるいはMRI検査を受けて問題がないか判断できない場合は、自分だけで判断せず必ず治療を受けた歯科医院でMRI検査を受けていいかを相談しましょう。

ただし、昔の私のように「なぜそのような事を言ってくるのかがわからない」と思う先生もいらっしゃると思います。なぜなら歯科でインプラントをする先生達の中では、インプラントが入っている患者様がMRIが撮れないという認識が全くないからです。
特にインプラントの勉強をされている先生であればなおさら、チタン性のインプラントを使うことが当たり前であり、「それぐらいの事は医科の先生も知っているだろう」という認識があるからです。
ですので、もし聞いても「なぜそんな事を聞いてくる?」と思われる可能性もありますので、「使用しているインプラントがチタン製であるかどうか、磁石などの装置が入っていないか」をお聞きした方が良いかもしれません。

 保険の金属とMRI問題

そこで今このMRI問題でインプラントと共に注目されているのが、保険の金属冠です。
保険の金属冠には金、銀、銅、パラジウムなどが含まれています。
アレルギーの問題も心配されていますし、CTの画像の乱れにも大きく関わります。
そしてMRIによる発熱の心配も懸念されています。
磁気は浴びていない為、MRIの故障の問題にはならないと思われますが、いざ必要な時に撮影拒否をされる可能性もありますので、当院では保険の金属冠はセラミックに変えることをオススメしています。