医療法人社団 オオマチ歯科クリニック 理事長の大間知です。

今回は当院に来院された一人の患者様のお話をさせていただこうと思います。当院では、患者様がどのような経緯で当院にお越しになられたかをお聞きする「カウンセリング」というものを最近行っているのですが、その中でとても印象に残った患者様のお話をさせていただこうと思います。

お孫さんからの一言がもたらした変化

『汚いから、おばあちゃんと一緒にごはん食べたくない！』

これは、その患者さんが、5才のお孫さんから言われた一言だそうです。

当時63才のＡさんは、一年前に歯を失ってしまい、当時通っていた歯科医院で入れ歯を入れたそうです。そして、入れ歯のまま食事をしていると、どうしてもうまく噛めずに、食べ物や時には入れ歯が口から飛び出してしまっていたそうです。

もちろん、お孫さんに悪気はなかったと思います。しかし、お孫さんの事を溺愛し、毎日一緒に過ごしていたＡさんにとって、その一言には大きなショックを受け、それ以来Ａさんは食事を自分の部屋にこもって一人でするようになってしまったそうです。

インプラント治療で取り戻した笑顔

Ａさんは、お孫さんが生まれたときから自分の子供以上に可愛がっていらしたそうです。それまでは、日に日に成長するお孫さんの姿を見ながら食事をすることが、何よりの楽しみだったそうです。そんな一番の楽しみを失ってしまったＡさんは、とても悲しそうにおっしゃっていました。

「入れ歯なんか入れなければ良かった・・・」

カウンセリング時にこの話を聞いた私は、とても辛い気持ちになりました。この方はその後当院でインプラント治療を選択され、今は快適な食生活をされています。お孫さんともまたお食事をされるようになったそうです。

治療法選びの重要性

この方だけでなく、初来院時のカウンセリングで「入れ歯が痛くて噛めない」「入れ歯が気持ち悪い」「入れ歯がすぐ外れる」という話をよく聞きます。歯科医療は日々進歩していますが、食べることに苦労している方がなんて多いんだろうと感じています。

しかも、Ａさんが歯を失った時に通っていた歯科医院では、どうやって失った歯を補うかという治療方法の詳しい説明はほとんどなかったそうです。そのため、どの治療法を選んだらいいのか分からず、歯科医師から勧められるままに入れ歯を入れることとなったそうです。

治療法による生活の質の違い

実は、どの治療方法を選ぶかにより、その後の人生の質は大きく変わります。多くの方が年齢を重ねるほど「最後に残る楽しみは食事だね」とおっしゃっています。歯は人生の幸せに欠かせません。

歯は「美味しいものを美味しく食べる」「季節の食材を楽しむ」といった、豊かな食生活のために絶対に必要なものです。2012年の調査では、55～74歳の男女を対象とした調査で「若い頃に歯の定期検診を受ければよかった」というのが第1位でした。人は多くを失って初めてそのありがたみに気づくのです。

選択が人生を左右する

歯を失った際の治療方法は、食生活の質だけでなく、残っている歯の寿命、健康な歯を削るかどうか、虫歯のリスク、見た目の自然さ、痛みの有無、口臭などにも大きく影響します。これらの違いによって、人生の質が大きく変わります。

私が今回このブログを書いている理由は、「歯を失ってしまった方が本当に納得して治療を選べるように」「治療法について正しい知識を得てほしい」と考えているからです。

もちろん、「この治療法でなければ幸せになれません」というつもりはありません。人によって最適な選択肢は異なります。そのため、まずは正しい情報を理解して納得して治療を選んでいただきたいと考えています。

歯を失った方への選択肢

既に歯を失っている方も諦めないでください。歯を失った方の治療法としては、ブリッジ、入れ歯、インプラント、歯の移植といった選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、患者様には納得の上で選んでいただきたいです。

残っている歯の本数やお体の状況によっても適した治療法は異なるため、まずはご自身のお口の状態に合った治療法をしっかりと相談してください。

後悔しないために

選択は、人生の質を左右する非常に重要なものです。歯の治療法の選択が残りの歯の寿命にも大きく影響します。患者様には、少し先の将来を見据えて、今できるベストな選択をしていただきたいと心から願っています。