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マイオブレースで「鼻呼吸」ができるようになる理由
塚口オオマチ歯科・矯正歯科院長の大間知です。
今回は「マイオブレースで『鼻呼吸』ができるようになる理由」について、わかりやすくお話しさせていただきます。
お子さまの「口がぽかんと開きやすい」「いびきや口の乾きが心配」「朝すっきり起きられない」「うつむき姿勢になりやすい」といったお悩みは、実は“口呼吸”と深く関係していることが多くあります。
マイオブレースは、装置で歯を動かしながら、呼吸・舌の位置・飲み込み方・唇の閉じ方といった「お口の使い方」も見直す小児矯正です。
なぜそれで鼻呼吸ができるようになるのか、仕組みとご家庭での工夫まで順番に解説します。
目次
はじめに
お子さまの口呼吸は、見た目だけの問題ではありません。
口から乾いた空気が直接のどへ入ることで、のどが荒れやすくなり、むし歯や歯ぐきの腫れのリスクも上がります。
睡眠が浅くなり、朝のだるさや日中の集中力低下の原因となっている方もいらっしゃいます。
さらに、口が開いている時間が長いと舌の位置が下がり、上あごの広がりが足りなくなることで、歯の並ぶスペースが不足しやすくなります。
鼻呼吸は、鼻の中で空気が温められ、湿らされ、不要なホコリが取り除かれてから肺へ届きます。
つまり体にやさしい空気の通り道です。
マイオブレースは「装置+アクティビティ(トレーニング)+生活の見直し」の三本柱で、無理なく鼻呼吸へ戻していきます。
結果として、歯並び・姿勢・睡眠の質など、成長期に大切な土台づくりにつながります。
マイオブレースとは?

やわらかいマウスピース型の装置を使い、歯並びを悪くする原因(口呼吸・舌の位置・飲み込み方・唇や頬の筋肉の使い方など)に働きかける矯正法です。
日中1〜2時間と就寝時に装着し、月1回程度の通院でアクティビティをステップアップしていきます。
装置だけに頼らず、体の使い方を学び直すことで、後戻りしにくい状態を目指します。
詳しい仕組みは以下当院ページをご覧ください。
なぜ「鼻呼吸」が大切か

鼻は、体にとって理想的な“空気の入口”です。
空気は鼻の中で温められ、湿らされ、細かなホコリが取り除かれ、のどと肺にやさしい状態で運ばれます。
鼻呼吸ができると、のどの乾燥が減り、風邪を引きにくくなり、いびきが軽くなり、夜間の目覚めも減って、朝の目覚めが楽になります。
日中の集中力や、学習・運動時のパフォーマンスにも良い影響があります。
さらに、鼻呼吸は舌の正しい位置(上あごのスポット)を保ちやすくします。
舌が上あごにあると、上あごは内側からやさしく支えられ、顔の成長方向と歯列の広がりが整いやすくなります。
その結果、永久歯の生えるスペースが確保され、無理な抜歯や強い力での移動が必要になりにくく、将来の安定にもつながります。
口呼吸になりやすい主な原因
口呼吸は、ひとつの原因だけではなく、小さな要因の積み重ねで起こります。
代表的なものは、鼻づまり(季節のアレルギー・風邪のあと)、舌が下に落ちやすい癖、唇を閉じる力の不足、飲み込むときに舌先を前へ押し出す癖、うつむき姿勢・頬杖の習慣、柔らかい食事中心で噛む回数が少ない、などです。
これらが重なると、口が開いたままになり、舌は下がり、鼻呼吸に戻りにくいループにはまってしまいます。
マイオブレースは、このループを断ち切るために、変えやすいところから順番に整えるという考え方で進めます。
装置で感覚をつかみ、アクティビティで動かし方を覚え、生活の中で“使う回数”を増やすことで、体が自然と正しい使い方を選ぶようになります。
マイオブレースで鼻呼吸ができるようになる仕組み

マイオブレースは、装置で「舌が上あごに収まる位置」と「唇をそっと閉じる感覚」を覚えやすくし、月1回のアクティビティで体の使い方を反復練習します。
ポイントは、以下の4つ。
- ①鼻で吸って鼻で吐く
- ②舌先を上の前歯のすぐ後ろ(スポット)に置き舌全体を上あごへ密着
- ③口を閉じたままやさしく飲み込む
- ④上下の唇を軽く触れさせ口角に力を入れない
これらを日常の動作に落とし込むことで、意識しなくても鼻呼吸を保ちやすい“楽な姿勢と動き”に切り替わっていきます。
実践のコツは、がんばり過ぎず「短時間×毎日」。
呼吸は肩が上がらないようお腹に手を当て腹式を意識、鼻づまりの日は入浴や加湿で整えます。
舌はスポットに置いたまま数秒キープ→リラックスを繰り返し、嚥下は少量の水で「コクン」と舌の後ろで流す感覚を再学習。
唇は横に引かず上下をやさしく触れさせ、「んー」と声に出さないハミングで口唇閉鎖を練習します。
成功体験を小さく積み重ねるほど定着が早まります。
また、舌が上あごに広く接していると上あごは内側から支えられ幅が確保されやすく、上あごが鼻の床でもあるため結果的に鼻の通り道(気道)も整い、鼻呼吸がしやすくなります。
個人差はありますが、「装置で感覚をつかむ+正しい使い方を毎日くり返す」ことで、成長の力が味方になり、後戻りしにくい呼吸の土台づくりにつながります。
必要に応じて耳鼻科的なケアを併用し、無理のないペースで進めていきます。
日中と就寝時の習慣づくり

鼻呼吸は、トレーニング時間だけでなく、日常の中で何回「正しく使えたか」で定着します。
日中は、うつむき姿勢や頬杖を減らし、画面は目の高さへ。
食事は「よく噛む」を意識し、飲み込むときは舌先をスポットへ。外出時は鼻づまりが強い季節にマスクや加湿をうまく使い、鼻の通りを整えます。
就寝時は、枕の高さを見直して、あごが上がり過ぎないようにします。
寝室は適度に加湿し、寝る前に軽く鼻をかむ・入浴で温める・水分をとるなどの小さな工夫を積み重ねましょう。
皮膚が敏感なお子さまは、テープに頼らず、「口はそっと閉じ、鼻で吸って吐く」を静かに意識するだけでも十分です。
ご家庭でできるチェックリスト

次のサインが複数当てはまる場合、鼻呼吸トレーニングを始めるよいタイミングです。
・テレビや勉強中に口が開きがち/「口ぽかん」になりやすい
・寝ているときに口が開いている、いびきがある、朝にのどが渇いている
・舌が上あごにつかず下に落ちている/「さ行」「た行」がこもりやすい
・飲み込むとき、唇や頬に力が入りやすい/舌を前に押し出す癖がある
・猫背になりやすい/長時間のタブレット・スマホでうつむき姿勢が多い
チェックは「できていない探し」ではなく、「今日はここができた」を見つけるメモにしましょう。小さな成功の積み重ねが、一番の近道です。
よくある誤解とつまずき
「装置を入れておけば、勝手に鼻呼吸になる」という誤解があります。
実際には、装置+アクティビティ+生活習慣の三点をそろえることで、体の使い方が切り替わります。
また、花粉の季節や風邪のあとに一時的に口呼吸へ戻ることは珍しくありません。
これは“後退”ではなく自然な揺り戻しです。
基本に戻り、短時間でも毎日を取り戻せば、また前へ進めます。
装着忘れ対策には、時間と場所を固定するのが効果的です。
たとえば「夕食後〜お風呂まで」「就寝前の読書タイム」など、いつもの流れに組み込むと続けやすくなります。
ご家族の声かけやチェック表での“見える化”も、やる気の維持に役立ちます。
当院での進め方

当院では、まず無料相談でお悩み・生活リズムを丁寧にお聞きし、鼻呼吸・舌位・嚥下・姿勢などの“使い方”を確認します。
適応があれば、装置の選択とアクティビティ計画をご提案します。
3〜5歳は保険適用の「口育」で準備、6〜9歳でマイオブレースを本格スタート、10歳以降は永久歯が生えそろってから必要に応じて別のマウスピース矯正(インビザライン等)を検討するのが当院の基本方針です。
どの年齢からでも、鼻呼吸・舌位・嚥下の再学習は無駄になりません。月1回のペースで経過を確認し、無理なく続けられるよう伴走します。
まとめ

マイオブレースが鼻呼吸につながる理由は、装置で形だけ整えるのではなく、呼吸・舌位・嚥下・口唇閉鎖という「使い方」そのものを体に覚えさせるからです。
鼻呼吸は、睡眠の質・姿勢・お口の健康・将来の歯並びの安定まで、成長期の大切な土台を支えます。毎日の小さな積み重ねが、いちばんの近道です。
「うちの子はどこから始めるのが良い?」という疑問は、どうぞ遠慮なくご相談ください。
尼崎・塚口の当院で現在の状態を一緒に確認し、その子に合った続けやすい進め方をご提案いたします。
