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歯の豆知識
インプラント
インプラント症例:40歳男性のケース
初診時の状況
症例概要
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患者:男性
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年齢:40歳
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主訴:歯がグラグラする、歯ぐきが痛い・腫れている
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治療部位:左下第一大臼歯(歯根破折)
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治療期間:1年3ヶ月
問診
患者様は「下の奥歯の違和感があり、噛むと痛い」とのことで他院を受診されていました。
そこで「次に痛みが出たら抜歯しかありません」と言われ、不安を感じて当院へご相談に来られました。
当院では詳細な検査を行い、金属の被せ物が入っている左下第一大臼歯を確認すると、歯が大きく揺れ、歯ぐきには炎症と腫れが見られました。被せ物を外し、根管治療を試みましたが、歯根に大きな破折が見つかり、保存不可能と診断しました。
患者様には「抜歯後の選択肢」としてブリッジ、入れ歯、インプラントの3つをご説明しました。ブリッジでは両端の健康な歯を大きく削る必要があること、入れ歯は違和感が強く噛む力も制限されることをご理解いただき、最終的にインプラント治療を選択されました。
口腔内所見
左下第一大臼歯は歯根破折により動揺が著明で、歯ぐきに強い炎症を認めました。周囲の骨は部分的に吸収が進んでいました。
また、他の奥歯にも金属の被せ物や詰め物が多くあり、長期的な口腔環境改善のため、左下第一小臼歯〜第二大臼歯、右下第二小臼歯・第二大臼歯、右下第一大臼歯についてもジルコニアクラウンへのやり替えをご希望されました。
治療内容
1. 被せ物の除去・根管治療
まずは左下第一大臼歯の被せ物を外し、根管治療を行いました。しかし診査の過程で歯根破折が判明。破折歯は残しても予後が悪く、感染が拡がるリスクがあるため、抜歯を決断しました。
2. 抜歯と治癒期間(約3か月)
抜歯は周囲の骨をできるだけ保存するように慎重に行いました。抜歯後は骨補填材を使用し、将来のインプラントが安定するよう骨の再生を促しました。その後、3か月間の治癒期間を設けました。
3. CT撮影・サージカルガイド作成
治癒期間終了後にCTを撮影し、骨の状態を確認。骨の厚み・高さとも十分で、インプラント埋入に適した状態となっていました。安全性を高めるため、サージカルガイドを作成しました。
4. インプラント埋入手術
局所麻酔下で手術を行い、左下第一大臼歯部にチタン製フィクスチャーを埋入しました。手術時間は30分ほどで、出血や腫れも軽度にとどまりました。
5. 骨とインプラントの結合(約6か月)
埋入後は骨とインプラントがしっかり結合するのを待ちました。この期間、仮歯を使用し見た目や咀嚼機能を維持しました。
6. 上部構造の作成・装着
骨結合が確認できた時点で型取りを行い、ジルコニア製のクラウンを製作・装着しました。自然な色合いと形態で、周囲の歯との調和も良好でした。
7. 周囲の歯のクラウンやり替え
インプラント治療の期間中に、他の被せ物や詰め物のある歯も診査。虫歯や二次カリエスになりかけている部位を治療し、金属のクラウン・インレーはすべてジルコニアへとやり替えました。これにより、見た目の審美性だけでなく、長期的な耐久性と清掃性も向上しました。
治療後の経過
インプラントが入ったことで、左下奥歯でしっかり噛めるようになり、食事や会話の不自由さは解消されました。両隣の歯を削らずに済んだことも、患者様に大変ご満足いただけました。
さらに他の奥歯もジルコニアに置き換えたことで、金属特有の見た目の不自然さや劣化の心配も解消。全体の口腔環境が改善されました。
患者様の感想
「下の奥歯の違和感(噛むと痛い)があり、他の歯科で診てもらってましたが、『次に痛みが出たら抜歯します』と言われたので、新しく設備の整っている“オオマチ歯科クリニック”にお願いする事にしました。根っこの治療等、色々してもらいましたが、割れてしまい残念ながら抜歯する事になり、保険治療では両端の歯を削り、ブリッジになると言われたので、1本でも自分を残す“インプラント治療”を選択しました。治療は時間がかかりましたが無事成功し、今では自分の歯と変わらず食事や会話が出来て満足しております。インプラント治療中は骨に定着するまで時間がかかるのでその間、治療済みの歯を診てもらい、虫歯になりかけている所を治療してもらいました。痛みが無くても徐々に進行していると院長に言われたので、この際、時間をかけて全ての治療済みの歯を診てもらいました。レントゲン画像等を観ながら院長と直接治療方針を聞く事ができ、メリット・デメリットも詳しく教えて頂き安心して治療が受けられた事に感謝しております。ありがとうございました。」
インプラントのメリット(今回の症例から)
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両隣の歯を削らずに済む
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自然な見た目で審美性が高い
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強い咬合力を回復できる
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ブリッジや入れ歯と違い、違和感が少なく快適
長持ちさせるためのポイント
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毎日のブラッシングと歯間ブラシによる清掃
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3〜4か月ごとの定期メンテナンス
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噛み合わせの定期的なチェック
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不調を感じたら早めの受診
まとめ
今回の40歳男性の症例では、歯根破折によって保存不可能となった左下第一大臼歯をインプラントで回復しました。治療期間は1年3ヶ月と長期にわたりましたが、結果的に咀嚼機能と見た目が自然に回復し、周囲の歯の再治療も含めて口腔全体の健康が改善しました。
患者様は「今では自分の歯と変わらず使える」と喜ばれ、治療に時間をかけた価値を実感されています。
インプラントは単に1本の欠損を補うだけでなく、口腔全体の環境改善につながる治療です。歯のぐらつきや破折でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。