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歯の豆知識
インプラント
インプラント症例:76歳男性のケース
初診時の状況
症例概要
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患者:男性
- 年齢:76歳
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主訴:右上の歯二本がグラグラして気になる。抜歯が必要なのであればインプラントを希望
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治療部位:上顎右側第二小臼歯(1本)
- 治療期間:1年間
問診
右上の二本の歯がグラグラして気になるとのことでご来院されました。内科的な持病もなく、歯科治療に慣れているとのことで、もし抜歯となった場合はインプラントを選択したいとおっしゃっていました。
口腔内所見
初診時の診査では、上顎の右側第一小臼歯及び第二小臼歯に動揺(歯のグラつき)が認められました。
レントゲン写真で確認しても歯周病により歯を支える骨(歯槽骨)が痩せており、特に第二小臼歯はすでに痛みも起きなくなっており、殆ど歯ぐきだけで歯を支えている状態だとわかりました。
歯槽骨は再生しないため、こうなってしまった歯はグラつきによる違和感や日常生活で突然抜けて飲み込んでしまうリスクがあるため、早めに抜く必要があります
また、残存歯(残っている歯)が多く、下の前歯が擦れて平らになっている(咬耗)ことから、咬合関係は良好であるため、同じく主訴にあった隣の第一小臼歯は抜かずに持たせる方向で進めていく運びになりました。
治療内容
1.CT撮影
二次元でのレントゲン写真では、インプラント施術で重要な実際の骨の厚みなどが不明確なため、CT撮影を行います。これによって抜歯後もしっかりインプラントを固定できるだけの顎の骨があるか確認します。
2. 動揺歯の抜歯
先に述べた通り、動揺の激しい上顎右側第二小臼歯を抜歯します。抜歯後の傷口を丁寧に掃除・消毒し、骨がきれいに再生するようにします。
3. 抜歯後の傷の再生を待つ(約6ヶ月間)
インプラントは抜歯後即埋入も可能なケースがありますが、今回は歯周病の進行度と患者への負担を考えて、6ヶ月間は抜歯した跡の再生を待ちました。再生を待っている間は他の虫歯の部位や歯周病の治療に努めました。
4.CT撮影・ガイド作成
半年間経ったので、CT撮影によって顎の骨の状態を診ます。しっかり骨の再生が確認できたのでインプラント施術を進めるべく、サージカルガイドの作成を行いました。サージカルガイドはインプラント施術の際にインプラントを埋め込む場所の目印となる特殊なマウスピースです。これによってより安全で正確なインプラント施術を可能にします。
5. インプラント埋入手術
インプラント埋入手術を行います。埋入手術は局所麻酔を打って行い、施術時間は30分〜1時間ほどで終わります。また、埋入手術ではネジ状のフィクスチャーと呼ばれるものを顎の骨に埋め込みます。フィクスチャーは主にチタンで出来ており、生体親和性が高く金属アレルギーを引き起こしにくいとされています。
6. 顎骨とフィクスチャーの定着を待つ(約3ヶ月間)
フィクスチャーの埋入後、骨とフィクスチャーがしっかり結合するまで3ヶ月間の待機期間を設けます。
7. 上部構造の作成・装着
骨にフィクスチャーしっかり結合されたことを確認したので、人工の歯になる部分(上部構造)の作成・装着をします。
治療後の経過
インプラント装着後、特に違和感もなく普段通りに噛めるとおっしゃっていました。第二小臼歯は特に硬いものを食べる際に使われる部位なので、今回のように残存歯が多く咬合関係が確保されている方には元の歯とほぼ遜色のない咬合力を持つインプラントは抜く前と生活を変えることなく過ごすことができます。
また、インプラントといえど永遠のものではないと注意深く伝え、長持ちさせるために定期的なメンテナンス、そして歯磨きだけではなく歯間ブラシを併用したホームケアを勧めました。インプラントは虫歯にはなりませんが、清掃が不完全であるとインプラント周囲炎という歯周病と同様の病気になることがあります。これはせっかく埋入したインプラントを抜く大きな原因となってしまうため、インプラント施術後はこれまで以上に清掃に気を配る必要があります。
治療後の感想
「インプラントを装着していただきありがとうございました。しっかりと歯が固定されて全くぐらつきもなく、咀嚼もできています。」