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歯の豆知識
インプラント
院長の歯はどおなった?
こんにちは。 尼崎市・阪急塚口駅から徒歩7分の塚口オオマチ歯科・矯正歯科、院長の大間知です。
今回は、以前にブログでお話をしたことがある私自身の口の中に起こった出来事と、それをきっかけに行った新人ドクターのインプラント研修についてお話ししたいと思います。
以前ブログに投稿した事もあり、たまに「先生歯どおなったんですか?」と聞かれるので、その後の経過も含めて今回お話させて頂きます。
目次
「患者さんにする前に、まず自分たちが練習する」――右上5番のインプラント治療を通して感じたこと
実は私の右上5番の歯が、約3年前に折れてしまいました。
「できることなら、自分の歯を残したい」
これは患者さんに対してだけではなく、自分自身の歯に対しても同じです。
そのため、折れてしまった歯を何とか保存できないか、さまざまな治療を行ってきました。
その一つが「挺出」です。
歯を少しずつ引っ張り出すことで、何とか歯を残して使えないかと試みました。
しかし、さまざまな経過をたどる中で、最終的には保存することが難しい状態になってしまいました。
約3年にわたっていろいろな治療を行いながら経過を見てきましたが、最終的には「この歯を無理に残すよりも、抜歯して次の治療に進むべきだ」と判断しました。
そこで私は、一つのことを考えました。
「せっかく抜歯するのであれば、この機会を新人ドクターの教育にも活かせないだろうか?」
そして、この右上5番を使って、新人ドクターに抜歯からインプラントまでを経験してもらうことにしました。
新人ドクターにインプラントを経験してもらう
当院では、新人ドクターが新しい治療技術を身につけるために、さまざまな研修を行っています。
インプラントももちろんその一つです。
豚の骨を買ってきてみんなで実習なども過去何度も積み重ねてきました。
ただ、インプラントは「勉強したから、明日から患者さんにできます」という治療ではありません。
知識を身につけること。
器具を実際に触ること。
模型などで練習すること。
そして、実際の臨床を経験すること。
これらを一つひとつ積み重ねていく必要があります。
特に新人の先生にとって、いきなり患者さんにインプラントをするというのは、大きな責任と緊張を伴います。
だから私は、
「患者さんにする前に、まず自分たちが徹底的に練習する」
ということを大切にしています。
今回、その練習台になったのが私自身の歯でした。
日曜日を使ってインプラント研修
今回の治療は、当院で行っている新人ドクター研修の一環として実施しました。
日曜日に新人ドクターに来てもらい、普段の診療とは少し違う環境で、インプラントについて勉強してもらいました。
今回はインプラントメーカーの方にも来ていただきました。
当院で使用しているインプラントの特徴や性状、使用する器具、埋入方法などについて説明していただき、その上で実際のインプラント治療に立ち会っていただきました。
さらに今回は、大学病院の口腔外科に残っている先生方にも来ていただきました。
今回の歯は、約3年間いろいろな治療を行ってきた歯です。
そのため、抜歯も簡単に終わるとは限りません。
そこで、難しい抜歯になった場合にも対応できるよう、口腔外科の先生方にも協力していただき、万全の体制を整えました。
その日のうちに抜歯からインプラントまで行えるよう、事前にすべての準備を整えておいたのです。
そして、実際に新人ドクターにインプラントをしてもらいました。
結果は――
大成功でした。
もちろん私自身が院長として立ち会い、必要なところではサポートをしました。
「新人だから、とりあえず一人でやってみよう」ではありません。
挑戦してもらう。でも、一人にはしない。
これが私の考える教育です。
新人ドクターにとっても、とても良い経験になったようで、「本当に勉強になりました」と喜んでくれました。
そして、もう一つ大きな収穫がありました
今回、私が自分自身を実験台にしてインプラントを受けたことで、もう一つ、とても大きな収穫がありました。
それは、
「実際にインプラントを受ける患者さんの立場を、自分自身で体験できたこと」
です。
私たち歯科医師は、治療する側です。
そのため、患者さんが治療中や治療後にどう感じているのかは、医学的な知識としては理解していても、本当の意味では理解できていないことがあります。
今回、実際に自分が患者さんになってみて、
「なるほど、患者さんにはこう感じているのか!」
と気づくことがたくさんありました。
これは今後の診療に、とても大きな意味がある経験だったと思います。
① 思っていた以上に「頭に響く」
まず一番最初に感じたのが、
「思っていたより、かなり頭に響く」
ということです。
抜歯するときに力がかかる感じ。
歯の根が折れたときの音。
器具による振動。
こういったものが、想像以上に頭に響きました。
実際、術者と周囲のドクターの会話や、自分自身が歯科医師としてこれまで経験してきた感覚から、「今、こういう状態なんだろうな」とある程度想像できます。
多分治療する側からすると、ドリルで削っているときに「スッと入った」という感覚があったんだろうな?という会話がなされている時に、患者サイドである自分の体験からすると「めっちゃガタガタ響いてました!」これはかなり衝撃的でした!いろんな意味で!w
実際に感じる振動も衝撃がすごかったですし、患者サイドは術者が感じてる感覚とは全く違う感覚なんだというギャップにも衝撃的でした!!
術者からすると「そんなに抵抗感なくしている」治療でも、患者さんの頭の中では、
「今、すごいことをされているんじゃないか?」
「大丈夫なのかな?」
と感じるだろうな!と思いました。
今回、自分が患者側になって初めて、その感覚がよく分かりました。
② 治療後に唾液に血が混じっている
次に感じたのが、治療後の出血です。
もちろん、抜歯やインプラントの後に血が混じることは、歯科医師からすれば「当然起こり得ること」です。
しかし、実際に自分が治療を受けてみると、
「術後6時間ぐらい経っているのにまだこんなにちょろちょろ血が出るんだな」
と感じました。
医学的には問題のない範囲でも、患者さんからすれば、
「これ、大丈夫なのかな?」
「いつまで血が出るんだろう?」
と不安になると思います。
治療する側からすると当たり前のことでも、患者さんにとっては当たり前ではありません。
今回の経験を通して、「医学的に問題がない」ことと、「患者さんが不安を感じない」ことは別の話なのだと改めて感じました。
③ 麻酔が切れると、やっぱり痛い
そして、麻酔が切れた後。
やはり、じんわりと痛みが出てきました。
当院では、痛み止めについて胃腸障害などの副作用を避けるため、
「一度飲まれたら次の服用までは8時間空けてください」
と説明しています。
もちろん、これは安全面を考えての説明です。
しかし、今回、自分自身が実際に手術を受けてみると、
「麻酔が切れる前に痛み止めを飲んでおいた方が、患者さんは楽なんじゃないか」
と感じました。
実際に痛みが出てきてから痛み止めを飲むと、しばらくして痛みが落ち着き、その後はかなり快適に過ごすことができました。
「痛くなってから飲む」というよりも、患者さんの状態によっては、麻酔が切れるタイミングを考えて服用してもらうことも大切なのではないか。
もちろん、薬の種類や患者さんの全身状態などによって対応は異なります。
しかし、少なくとも今回、自分自身が患者として経験したことで、**「患者さんが少しでも楽に過ごせるように、術後の痛みについてもっと具体的に説明しよう」**と考えるようになりました。
④ 手術した歯以外まで痛くなる
そして、これは私自身が一番「なるほど」と思ったことかもしれません。
今回手術をしたのは右上の5番です。
ところが、術後に痛くなったのは右上5番の部分だけではありませんでした。
右上の3番、4番、6番。
さらには右下の3・4・5番あたりまで、
「なんか痛いな」
と感じました。
医学的には、「まあ、そういうこともあるよね」と考えられる現象です。
神経の関連や周囲組織への影響など、歯科医師として考えれば説明できることです。
でも、実際に自分の身に起こってみると、
「本当にこうやって周りの歯まで痛く感じるんだ!」
と、改めて実感しました。
患者さんからすれば、
「治療をしたのは右上5番なのに、なんで右上4番が痛いんだろう?」
「なんで下の歯まで痛いんだろう?」
と不安になるのは当然です。
だからこそ、事前に、
「手術した歯以外の周囲の歯や、反対側の歯まで痛く感じることがあります」
「びっくりするかもしれませんが、そういうことが起こる場合があります」
と伝えておくだけでも、患者さんの不安はかなり減るのではないかと思いました。
この経験を、スタッフ全員で共有しました
今回、自分自身が患者になったことで得た経験は、私一人だけの経験にしてはいけないと思いました。
そこで、これらの内容を当院のスタッフ全員に共有しました。
「治療する側からすると当たり前のことでも、患者さんからすると不安になることがある」
ということを、スタッフみんなに知ってもらいたかったからです。
そして今後は、今回の経験をもとに、インプラントなどの術後説明にもこうした内容をより具体的に盛り込んでいくことにしました。
患者さんが治療を受けた後、
「これって大丈夫なのかな?」
と一人で不安にならなくてもいいように、
「こういうことが起こる可能性があります」
「こういう場合は心配しなくて大丈夫です」
「こういう場合には医院へ連絡してください」
と、できるだけ先回りしてお伝えする。
それが、患者さんにとって安心できる医療につながると思っています。
「院長の僕に対してできない治療を患者さんにするのは失礼」
私はスタッフ教育において、ずっと大切にしている考えがあります。
それは、
「院長の僕に対してできない治療を患者さんにするのは失礼だ」
ということです。
もちろん、最初からすべての治療を完璧にできるドクターはいません。
だからこそ、練習が必要です。
模型で練習する。
実習をする。
経験のある先生に教えてもらう。
そして時には、今回のように私自身が実験台になる。
患者さんに治療をする前に、自分たちができる限り経験し、練習しておく。
そして、患者さんの立場になって考えてみる。
これが私の考える医療者としての責任の一つです。
「技術」と「患者さんの気持ち」の両方を学ぶ
今回の右上5番の治療は、結果的には私の歯をインプラントに置き換える治療でした。
しかし、私にとっては、それだけではありませんでした。
新人ドクターにとっては、抜歯からインプラントまでを経験する貴重な研修になりました。
そして私自身にとっては、患者さんの立場を実際に体験する貴重な機会になりました。
医療では、知識や技術がもちろん大切です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
患者さんが何を不安に感じるのか。
どんなことを「怖い」と感じるのか。
どんな説明があれば安心できるのか。
それを考えることも、良い医療を提供するためにはとても大切だと思います。
今回の経験を、今後の診療やスタッフ教育にしっかりと活かしていきたいと思います。
そして、ドクターだけではなく、歯科衛生士、歯科助手、受付を含め、スタッフ全員が知識や技術を高めていける医院にしていきたいと思っています。
患者さんにより良い医療を提供するために、まず私たち自身が学び、練習し、そして患者さんの立場になって考える。
これからも、そんな医院であり続けたいと思います。