塚口オオマチ歯科・矯正歯科院長の大間知です。
今回はお子さまの滑舌が気になる方へ原因とチェック方法をお話しさせていただければと存じます。
発音について、「“さしすせそ”が“しゃしぃしゅしぇしょ”に聞こえる」「“たちつてと”が言いづらそう」「早口になると聞き取りにくい」など、気になる場面は意外と多いものです。
保育園や幼稚園、学校で指摘されて初めて気付く方もいれば、ご家庭で会話していて「これって様子見でいいのかな?」と不安になる方もいらっしゃいます。
結論から申し上げると、滑舌は“歯だけ”が原因とは限りません。
舌の位置や動かし方、口呼吸、唇や頬の筋肉の使い方、姿勢などが重なって起こることも多いです。
だからこそ、原因を決めつけずまずは「どこが関係していそうか」を一緒に整理していくことが大切です。
目次
はじめに
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「さ行・た行が言いにくい」はよくある悩みですが、発音は成長とともに自然に整ってくることもあります。
一方で、何となく言いにくい状態が続くと、お子さま自身が話すことを避けたり、聞き返されることが増えて自信をなくしてしまったりすることもあると思います。
また、滑舌の悩みは「話し方」だけの問題ではなく、お口の中の状態(歯並びやかみ合わせ)や、お口まわりの使い方(舌・唇・呼吸)と関係していることがあります。
歯科で出来るサポートもありますので、「気にしすぎかな」と抱え込まず、早めに一度チェックしておくと安心です。
滑舌は「歯」だけが原因ではありません
滑舌が気になると、真っ先に「歯並びが悪いから?」と思う方が多いのですが、実際には次のように複数の要素が絡み合います。
①歯並び・かみ合わせ(前歯のすき間、出っ歯、受け口など)
②舌の位置・動かし方(舌が前に出る、上あごにつかない、力が入りすぎるなど)
③呼吸(口呼吸で口が開きやすい)
④唇・頬の筋肉(口が閉じにくい、発音時に力の入れ方が偏る)
このうち「どれが中心になっているか」で、見直す順番や改善の考え方が変わります。次から、ひとつずつ分かりやすく説明します。
原因① 歯並び・かみ合わせが関係するケース
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歯は、発音のときの“空気の通り道”や“舌が当たる場所”を作っています。
特に「さ行」「た行」は、舌先の位置や空気の抜け方が繊細な音なので、歯並びの影響を受けやすいことがあります。
前歯のすき間・出っ歯・受け口が発音に影響すること
たとえば前歯にすき間があると、息がスッと抜けやすくなり、「さ行」が“空気が漏れる音”になりやすいことがあります。
逆に、前歯が重なっている場合は、舌が当たる場所が定まりにくく、発音が安定しにくくなってきます。
また、出っ歯傾向で唇が閉じにくい場合、発音のときに口が開き気味になり、舌のコントロールが難しくなるケースもございます。
受け口傾向でも、舌の当て方がズレて言いにくさが出ることがあります。
ただし、「歯並び=必ず滑舌が悪い」ではありません。歯並びが少し気になっていても、舌や呼吸が整っていると発音はきれいな子もいます。
だからこそ、次の“舌”のチェックが重要になります。
原因② 舌の位置・舌の動きが関係するケース
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滑舌に関わる中で、特に見落とされやすいのが「舌のクセ」です。
舌は、話すとき・飲み込むとき・呼吸するときに、ずっと働いている筋肉です。舌の位置が安定していないと、発音もブレやすくなります。
舌が前に出る/下がる/スポットにつかない
本来、リラックスしている時は、舌が上あごにふんわり当たり、舌先は上の前歯の少し後ろのいわゆる“スポット”に置けている状態が理想です。
ところが、口が開きやすい子は舌が下に落ちやすく、話すときに舌が前へ出てしまうことがあります。
すると「さ行」「た行」の舌先の位置が安定せず、音がこもったり、違う音に聞こえたりしやすくなります。
また、飲み込むときに舌で前歯を押すクセ(舌が前に出る飲み込み)があると、発音時にも似た動きが出やすい傾向があります。
こうした“舌の動きのパターン”は、気づけば改善できることも多く最後にチェックリストを記載しておりますので、一度確認してみましょう。
原因③ 口呼吸・口が開きやすい習慣が関係するケース
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口呼吸が続くと、口が開きやすくなり、舌が下がり、唇の力も育ちにくくなります。つまり「口が開く → 舌が下がる → 発音が安定しにくい」という流れができやすいのです。
さらに、口呼吸だとお口の中が乾きやすく、発音がはっきりしない・声がこもると感じる場面も出てきます。鼻づまりがある季節や、風邪のあとに一時的に口呼吸が増える子も多いので、「いつもそうなのか」「時期によって変わるのか」も見てあげてください。
口呼吸が疑われる場合は、歯科だけでなく、必要に応じて耳鼻科で鼻の通りを確認することも大切です。原因が一つではないからこそ、できるところから整えていきます。
原因④ 唇・頬の筋肉の弱さ/使い方が関係するケース
唇は、発音のときの“フタ”の役割をします。
唇がしっかり閉じられない、閉じようとすると口角に力が入りすぎる、頬の筋肉の使い方が偏る…こうした状態があると、発音が不安定になることがあります。
また、食べるときに「くちゃくちゃ音がする」「飲み込むときに唇にギュッと力が入る」などが見られる場合、唇や頬、舌の使い方のバランスが崩れているサインかもしれません。
滑舌と食べ方は、意外とつながっています。
ご家庭でできる簡単チェックリスト
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ここからは、ご家庭で負担なくできるチェック方法をご紹介します。
大切なのは“出来ていない探し”ではなく、“傾向を知る”ことです。気になる項目が重なるほど、一度相談してみる価値があります。
お口の状態チェック
- テレビを見ているとき、口がぽかんと開きやすい
- 唇を閉じると、あごや口角に力が入りすぎる
- 前歯のすき間が大きい/前歯が出ているように見える
- 舌が前に出ていることが多い(ぼーっとした時に見える)
発音の様子チェック(さ行/た行)
- 「さしすせそ」「たちつてと」をゆっくり言うと、途中で崩れやすい
- 早口になると急に聞き取りにくくなる
本人が言いにくさを自覚していて、言い換えたり避けたりする
・スマホで短く録音して、数日おきに聞き比べると「疲れると崩れやすい」「朝は言いやすい」など傾向が見えてくることもあります。
食べ方・飲み込み方チェック
- 飲み込むときに唇を強く結ぶ/頬がへこむほど力が入る
- 麺類をすする時に口が開きっぱなしになりやすい
柔らかい物ばかり好み、噛む回数が少ない
これらは“舌・唇・頬”の使い方のヒントになります。発音とセットで見ると、原因が絞りやすくなります。
受診の目安|様子見で良い場合と相談した方がよい場合
様子見でも良いことが多いケース
- 成長とともに少しずつ改善している
- 本人が困っていない/聞き返されても気にしていない
- 口呼吸や歯並びの問題が目立たない
一度相談した方がよいケース
- 小学校に入っても発音の崩れが強く残る、または悪化している
- 「さ行」「た行」以外にも複数の音が言いにくい
- 口呼吸、ぽかん口、いびき、口の乾きが気になる
- 歯並びやかみ合わせ、舌のクセがはっきり見える
- 本人が話すことを避けたり、気にしてストレスになっている
早く相談するほど“軽い修正で整いやすい”ことも多いので、迷ったら一度チェックしておくのがおすすめです。
歯科で出来ること
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歯科では、歯並び・かみ合わせの確認はもちろん、舌の位置、唇の閉じ方、飲み込み方、口呼吸の傾向など「お口の使い方」を総合的に見ます。
もし「歯を動かす前に、まず使い方(呼吸・舌・唇)を整えるほうが良い」と判断した場合は、成長期に合わせてトレーニングを行いながら改善を目指していきます。
当院では、装置とトレーニングを組み合わせて“原因”から整える小児矯正としてマイオブレースという矯正治療を取り入れています。
滑舌の悩みは、歯並びだけの問題ではなく、舌・呼吸・筋肉のバランスが関係していることが多いからこそ、「今のお子さまに合った進め方」を一緒に考えることが大切です。
まとめ
「さ行・た行が言いにくい」という滑舌のお悩みは、歯並びだけでなく、舌の位置、口呼吸、唇や頬の筋肉の使い方など、いくつかの要素が重なって起こることがあります。
ご家庭での簡単チェックで傾向をつかみ、「歯の問題なのか」「舌や呼吸のクセなのか」を整理できると、必要な対策が見えやすくなります。
気になる点が複数当てはまる場合は、早めに一度ご相談ください。
塚口オオマチ歯科・矯正歯科では、お子さまが無理なく続けられる方法を大切にしながら、歯並びだけでなく“お口の使い方”まで含めてサポートしています。
気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
