
虫歯予防のヒントはスウェーデンにあり
スウェーデンの85歳以上の歯の本数は平均21本、日本は平均8本

皆さんは生涯生えてくる永久歯の本数が約28本ということをご存知でしょうか?お子さんが80歳になっても、この約28本の歯を健康に保つためには、歯科医院での定期的なケアだけでなく、ご自宅での正しいセルフケアや生活習慣の改善が必要不可欠になってきます。では将来、「全ての歯(28本の永久歯)を健康に保つ」という目的を達成するためには、どのような目標を持てば良いのでしょうか?その目標を達成するヒントはスウェーデンにあります。現在、スウェーデンの85歳以上の方の歯の本数は平均21本、日本で同じ年齢の場合だと、平均8本と大きく異なります。そして、この歯を残すヒントはスウェーデンでの「小児期からどのような取り組みをしているのか」ということが重要なポイントとなります。

スウェーデンと日本の12歳児のむし歯の本数
この表は12歳児のスウェーデンと日本のむし歯の本数の違いを表しています。昔から比べると日本でもかなり虫歯の数は減り、なんと1/4にまで減っています。これはメディアなどを通して歯に関する情報が多く知れ渡った体と考えられます。

むし歯の発生率は日本の半分!
しかし、予防を重視したスウェーデンでは、むし歯の発生率がなんと日本のさらに半分!小児期でこれだけの差が出てしまっています。そしてこの差がそのまま残る歯の本数につながるのです。
スウェーデンスタイルの予防ステップ
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乳歯が生える前
まずは、親子でお口に対して関心を持ってもらうことが大切です。物心がつく前に歯科医院に通うことで、歯科医院に慣れてもらいます。更に、親御さんには、歯ブラシの選択方法やフッ素の意味や使い方などの正しいお口の知識をお伝えしていきます。
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歯が生え始める頃
スウェーデンの子供たちは、歯医者さんごっこでお口の見せっこをします。子供の時からお口に関心を持つことが予防の第一歩です。
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永久歯が生えそろうまで
この時期は、定期検診をしっかりしていくことと、お子さんのお口の中に病気のリスクがあるかを歯科医師と歯科衛生士でチェックしていきます。
もし、リスクがある場合は、フッ素塗布・プラークコントロールやシーラントなどで予防処置を行います。 -
定期検診が習慣化し、健康な歯を維持できます
小さい頃から「歯科医院は定期検診のために行くところ」という習慣のついた方は、正しいお口の知識を身に着けることができています。自ら定期検診に通いプロフェッショナルケアとセルフケアのアドバイスを受けるので、一生涯健康なお口を維持することができます。
「むし歯」になる原因はこの4つです
むし歯の原因になる4つのリスクの輪

歯科予防先進国であるスウェーデンがむし歯予防で実績を上げている理由は、4つのカリエスリスクに対する取り組みをバランスよく日々の臨床に落とし込んでいるからです。
01.細菌の特徴

- 最近は誰の口の中にもいる
- ほっとくと細菌の数は増え続ける
- 歯にくっつきぬめり(バイオフィルム、プラーク)を作る
- 酸を産生できる(歯を溶かせる)
- 酸に対して抵抗力がある
- 清掃で劇的に減少するが、ぬめりは水やうがいでは取れない
02.食べ物(糖)

むし歯への影響を与える食物は、糖類(甘いもの)とデンプン(炭水化物)です。特に悪影響を与えるのが糖類の中でもスクロースと言われるものです。
スクロースを含む食品とは
キャンディ、チューイングガム、ジャム、ドライフルーツ、ビスケット、コーンフレーク、サラダドレッシング、ケチャップ、マスタード、果物があります。また、ポテトチップス(澱粉)もスクロースと同じくらい酸性になるので注意してください。そして、歯についたぬめりの中で虫歯菌が糖類とデンプンを発酵し「酸」を産生します。
03.歯(脱灰)と唾液

歯は、常に、「酸、外力(咬む力など)、細菌」(脱灰)と戦っています。そして、歯はそれらに負けないように、唾液中のミネラルや歯を硬化させる刺激(再石灰化)などで、脱灰と再石灰化の均衡状態、つまり、歯が健康な状態を保っています。これは、私たちが元々もっている歯の生体防御機能(生物学)です。しかし、間食の回数が増えたりすると、その均衡が崩れた時に歯が溶け(脱灰と言われる状態)、歯の中へ虫歯菌が侵入してきます。それをそのまま放置していると歯に穴があき、むし歯になってしまいます。私たちは、つねに戦っている歯のために、歯を強くするための手助けをする取り組み「」が必要となります。
唾液には様々な効果があり、歯を守るためにとても大切な役割を担っています。しかし、特に最近この唾液の量が減る病気や状態をよく見ます。
生物学的環境要因
全身疾患や投薬による唾液の分泌量の減少「ドライマウス(口腔内乾燥症)」など
社会的環境要因
ストレスによる唾液の分泌量の減少
04.プラークがついている時間

汚れがついている時間が長ければ長いほど虫歯になりやすい事は想像がつきやすいと思いますが、実は食事の回数が多いほど虫歯になりやすいのです。上の図のように食事をするとお口の中は酸性になるため、回数が多いと常に酸性の状態が続き、むし歯になりやすくなります。そして、糖質の多い食べ物をたくさん取ると、むし歯の原因菌の活動が活発になるため、なるべく控えるようにすることが大切です。つまり、おやつの回数が多かったり、ずっと甘いアメをなめてる、甘い飲み物を飲んでいる方などは大変危険です。
4つの取り組み
スウェーデンスタイルではこの4つの原因の内、「細菌」「食物」「歯質」について取り組むことを最優先とし、以下の4つを行います。
- バイオフィルム(プラーク)の除去
- 歯質を強くする(歯面が弱いとむし歯になります)
- 食習慣を見直す
- 定期検診
バイオフィルム(プラーク)の除去
むし歯を予防するためには、確実なバイオフィルム(プラーク)除去が必要となります。塚口オオマチ歯科・矯正歯科では、医院で行なうプロフェッショナルケアと患者さんご自身が行うセルフケア(歯ブラシ)を基本に、バイオフィルムとプラークの除去を取り組んでいます。
プロフェッショナルケア

塚口オオマチ歯科・矯正歯科では、バイオフィルム(プラーク)の除去は、なるべく歯を傷つけないように、柔らかいゴムで専用の歯磨剤を用いて行います。場合によってはエアフローという特殊な機械も併用して行います。
セルフケア

歯科衛生士のセルフケア向上のアドバイスを基に毎日の歯磨きでプラークを確実に取り除く取り組みです。
歯質を強くする取り組み(歯面が弱いとむし歯になります)

常に口の中で、「酸、外力、細菌」によるダメージを受けている歯のためにできる取り組み、それは、フッ素を正しく使うことです。塚口オオマチ歯科・矯正歯科では、患者さんのカリエスリスクに合わせて、これらを上手に組み合わせ「歯を強くする取り組み」を行っています。
フッ素の正しい使い方
患者さんのカリエス(むし歯)リスクにより、これらを組み合わせた予防が必要です。
- フッ素入り歯磨き剤でのブラッシング
- 年に数回のフッ素歯面塗布
- シーラント(むし歯予防のために、歯の噛む表面にある小さい溝にフッ素含有の樹脂を詰める処置)
- フッ化物の洗口
食習慣を見直す

食事のポイントは、だらだら食べ続けずに時間を決めて食事・間食をすること、できるだけ甘味は控えることです。食事をするとお口の中は酸性になるため、回数が多いと常に酸性の状態が続き、むし歯になりやすくなります。また、糖質の多い食べ物をたくさん取ると、むし歯の原因菌の活動が活発になるため、なるべく控えるようにすることが大切です。

定期検診
患者さんが「定期検診」に取り組む事により、「バイオフィルム(プラーク)の除去」「歯面を強くする取り組み」と「食習慣の見直し」のアドバイスや虫歯の進行をストップさせるための処置(シーラントなど)をすることができるようになります。つまり、「定期検診」が一番大切であり、始まりとなるのです。スウェーデンでは、この「定期検診」の重要性をいち早く気付き成功を収めています。まずは、「定期検診」。虫歯を予防するポイントを学び、それをぜひ、日常のセルフケアに活用してください。
一生健康なお口を保てるようになる為に
お子さんが将来お口で困らないために、小さい頃から歯科医院での定期検診を
お子さんが将来お口で困らないために、小さい頃から歯科医院での定期検診を受けてほしいということです。スウェーデンスタイルでは、将来、お子さんが大人になっていつまでも健康なお口を保つことが出来るようになるためには、小児期からの取り組みが本当に大事ということです。
時々口の中が虫歯だらけのお子様がいらっしゃいます。そのことを説明すると驚く親御さんもいらっしゃいます。
虫歯だらけの子が頑張って歯を磨いてきたのを見ると、歯を磨くことの重要性や虫歯になることのリスク、歯の磨き方を知らなかっただけだったんだなと感じる事があります。その時は「もっと早く教えてあげれたらよかった…」「もっと早く知ってもらえたらこうはならなかったのに…」と思います。
そういう時に「知ってもらうことの重要性」「教えてあげることの重要性」を強く感じます。
こういう子を無くしたい!という強い想いで、塚口オオマチ歯科・矯正歯科では小児歯科に力を入れる事を誓いました。
虫歯は削って詰めたら形は治りますけど、実際にはミクロの大きさの虫歯菌にとっては詰め物と歯の境目の段差が出来ることで住処を作ってしまうことになり、結局虫歯のループに入ります。つまりいかに歯を削らないか、治す必要のある歯を作らないかが大事になるのです。
むし歯を0(ゼロ)にすることはかなり難しい
「菌、食物、歯、環境」この4つのリスクファクターにより、むし歯が発病しますので、むし歯を0(ゼロ)にすることはかなり難しいです。
つまり「むし歯0(ゼロ)を目指しますが、むし歯予防のゴールとはしない」ということです。
それよりも、これら4つのリスクファクターを考えながらむし歯への取り組みを行うことが大切です。「むし歯の発病率が下がること」や「むし歯の発病時期を遅らせることにより、その結果とし発病しなかった」というような考え方に患者さんがシフトすることが出来ると、予防の本来のあり方が見えてくると考えられます。
予防とは、
- 発病率の低下
- 発病の時期を遅らせる(発病の先送り)
このような歯科予防先進国(スウェーデン)で行われている考え方が皆さんに伝われば嬉しいと考えております。