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歯医者が考える電子タバコや加熱式タバコが与えるお口の環境への影響

2019年01月01日

歯周病治療中の方が「アイコスに変えたんで大丈夫ですよね?」とおっしゃられる方が増えてきています。

そこでアイコスなど加熱式タバコがお口の環境へ与える影響を説明したいと思います。

口の環境として気になるのは「歯周病」、「歯の黄ばみ」、「歯茎の色」、「口臭」などですよね?

まずは健康に直結する歯周病との関係を中心に考えてみたいと思います。

健康被害の懸念より世界的にも禁煙が推奨され、日本でもたばこの吸いにくい今、愛煙家達にその打開策として発案されたのがこの加熱式タバコです。

 

その加熱式タバコがお口の環境にどのような影響を与えるのか、ネットでは色々な評判があるようなので、その真相と共にまとめてみました。

当院に来院される患者さんの中には「アイコスに変えてから歯茎がはれた」と言われた方がいらっしゃいました。

「アイコスに変えてから」だけでなく、「禁煙したら」という方もいらっしゃいました。

アイコスについてネット上で調べてみると、アイコスユーザーの中に色々な評判が上がっていました。その中に「アイコスを吸ってから口の中に違和感を感じる」という人もいらっしゃいました。さらには「アイコスで歯周病になってしまった」と言う人までいました。

どうやら、「歯茎」について何か違和感を持った人は当院の患者さん以外にも一定数いらっしゃるようです。

一方で、アイコスに変えたことで、匂いや口の苦味が軽減されたという人もいました。

 確かに、アイコスは紙巻きタバコよりは健康に良いですし、有害物質90%カットと言われると、病気のリスクが減ると安心してしまいます。

そんなイメージからか、また実体験からか、口内環境が良くなったと言っている人もいました。

では歯茎が腫れた人には何が起きていたのでしょうか?

医学的に分析してみたいと思います。

この現象が起こった人たちの共通点は、もともと紙巻きタバコ利用者、「元から喫煙者だった」ということであり、歯周病持ちだったという可能性が非常に高いと思います。

アイコスに変えてから歯茎が腫れたのは、今まで抑え込んできた元々の歯周病の症状が、アイコスに変えたこともしくは禁煙した事によって表面化してきたのだと思います。

ではなぜそのようなことが起きるのか?

ではアイコスに変えない方がいいのか?

そもそも禁煙しない方がいいのか?

それらの疑問を解決するために、まずは喫煙という行為が歯周病になりやすい根拠から考えていきたいと思います。

「喫煙者が歯周病になる」という根拠 

喫煙は、歯周病の最大の危険因子と言われています。

喫煙者と非喫煙者を比べると、喫煙者の方が歯周病になる確立が約3倍も高いそうです。

特に問題は、

歯茎に何かしらの症状が出るまでに、気付くことなく、重症化してしまう

というケースにあります。

この問題がなぜ起こるのかを考えるのにまず紙巻きタバコの害に注目してみましょう。

タバコの煙には4000種類の化学物質が含まれ、そのうち200種類以上は有害物質、発ガン性物質は70種類にもなると言われています。

特に

その中には『ニコチン』『タール』『一酸化炭素』という3大有害物質が含まれています。 

『ニコチン』は強い依存性があり

喫煙により、肺から速やかに吸収され全身に広がり、間接的には血管収縮作用ももたらします。

『タール』はフィルターに茶色く付着する、ヤニのようなべっとりしたもので、強力な発がん性があります。そしてこのタールは唾液の分泌量を減少させる効果があり、歯周病の元となる「歯垢」や「歯石」が歯に付着する要因にもなっているんです。

タールが口の中の粘膜に吸収されると、唾液の分泌量が減り、歯周病の原因である歯垢や歯石に付着します。

そして『一酸化炭素』は酸素の200~250倍の結合能でヘモグロビンと結合します。それによって血液の酸素運搬機能が阻害され、組織の酸素欠乏を引き起こし、ニコチンの血管を収縮させる作用によって、血液循環が悪化して、歯茎に酸素や栄養がいきわたらない状態になります。

つまり、タールは歯茎に汚れを付けて、ニコチンと一酸化炭素は歯茎に栄養を行き渡らせない、という歯周病への最強タッグとなっているので、紙巻きタバコの喫煙は歯周病を悪化させる要因となります。

では、アイコスの場合はどうなのでしょうか?

アイコスに切り替える≒タールがなくなる 

一般的には『タール』『一酸化炭素』は葉を燃やす事により発生すると言われていますが、加熱式タバコは独自の機械でタバコ葉を熱していますので「葉を燃やす」ことによって生じる「煙」に含まれる『タール』『一酸化炭素』が発生しないという見解であり、

今回この現象の肝は、加熱式タバコにタールが含まれない事にあります。

タールは有害物質なのは間違いないのですが、実は「炎症を抑える作用」や「抗ウイルス作用」という、成分が入っています。

紙巻きタバコから摂取するタールは基本悪影響ですが、要領を守って利用すれば、風邪やインフルエンザの予防や治療をしてくれる効果もあるそうです。

つまり紙巻きタバコは、タールの効果で歯周病の腫れなどの症状を押さえ込んでいたのです。

それをアイコスに変えると、アイコスはご存知の通りタールが含まれていませんので、今まで抑え込んできた元々の歯周病の症状が表面化してきたのです。

アイコスではなく禁煙しても、歯周病を訴える人は多い

ですので、「アイコスに変えて歯周病になった!」という人は、アイコスを吸う前から歯周病だった可能性が限りなく高いといえます。

実はこの症状、喫煙者が禁煙に成功した時にも、よく起きる現象だといわれています。

ここまでをまとめると、

・アイコスに変えるとタールが出ない

・よって炎症を抑える効果がなくなる

・元々歯周病持ちな人は歯茎の炎症が再発する

という流れとなります。

この症状事態は辛いものですが、もっと辛いのは見つからないまま口内環境が劣悪なまま何年も立ってしまうことです。

それこそ最悪な場合は、何本かの歯を失う事になります。

タールはそもそも、有害物質なことは間違いがなく、歯周病の大きな要因となっています。

ですので、「アイコスに変えたから歯茎が腫れたので紙巻きタバコに戻そう」という発想は辞めたほうがいいと思います。

アイコスだけでなく、プルームテックやグローなどの次世代タバコも全て同じです。 

ただ加熱式タバコが紙巻きタバコより安全だとしてもタバコです。先ほど説明したように喫煙者の人は歯周病になりやすく、症状が出にくい状態ですので、一度歯科医院で検診を受けていただく事を、可能であれば定期的な検診を受けていただく事をオススメします。

本来のベストは、喫煙をやめること

歯周病の治療や予防、口内環境を改善するために一番良いことは喫煙自体をやめることです。

次世代タバコも、「有害物質が少ない」からといっても、「健康に良い」わけではありません。

さらに、ご存知のとおり加熱式タバコにはニコチンが含まれており、歯茎への栄養補給を遅らせてしまう作用がありますので、歯茎への悪影響を止めることは難しいです。

特にインプラントなどの外科的な治療をお考えの方、今後控えている方はやめていただくことをお勧めします。

手術時には歯茎の治りが悪くなって手術が失敗になる事もありますし、せっかくお金をかけたインプラントの持ちも悪くなります。

喫煙の本質はニコチン依存症です。

禁煙しようとしてもなかなかできないのは、身体的依存と心理的依存という薬物依存があるからです。

ニコチンの依存度の発症はヘロインやコカイン、アルコールよりも高くなっています。

アイコスは結局ニコチンを吸っていますので、依存性もありますし、タバコを吸うという習慣も変わらないので、禁煙へ導くには逆に遠回りになってしまうように感じます。

アイコスの有害性はまだ発売されて期間が短いのではっきりと判明されていないのが現状ですが、禁煙学会からも緊急警告としてこの加熱式タバコの危険性を訴えています。

スイスの学者の研究によると、確かにニコチンなどは数パーセント減少しているものの、ホルムアルデヒドなどの発がん性物質は従来のタバコと同様でありました。

また、紙巻タバコと違い、発生する有害物質が見えにくいので、周囲の人々は受動喫煙を避けられず、かえって危険であるとの見解もあります。

アイコスの口内環境への他影響は?

それでは、「歯の黄ばみ」や「口臭」についてはどうなのでしょうか?

ずばり、アイコスに変えると歯の黄ばみは改善されるとの声が多いです。 

アイコスにはタールは含まれていませんが、ニコチンが含まれています。

ニコチンはいわゆる「ヤニ」と言われる歯を黄ばませる残念な効果があります。そして、血行が悪くなる事で歯茎の色を悪くしてしまう効果もあります。

そしてタールは、その黄ばみを歯に張り付けてしまう効果と血行の悪くなった歯茎の上に色素沈着する効果があります。つまり、紙巻きタバコはニコチンとタールを摂取するので、歯磨きをしてもなかなか落ちるのない歯と歯茎の着色を起こしやすいです。

一方アイコスは、ニコチンのみなので、きちんと歯磨きをしていれば、歯の黄ばみは改善され、歯茎の着色もマシになります。

※ただ、より一層早く白くしたい人は、歯科医院で歯垢や歯石を取り除いてもらったり、ホワイトニング効果が高い歯磨き粉を使ってみることをお勧めします。

口臭は改善される傾向 

口臭が少なくなったという情報をたくさん耳にしますが、こちらもアイコスにはタールが入っていないからという理由が大きいと思われます。

タールは煙の中に紙タバコ特有の強いにおいを発するからです。

しかしアイコスも臭いです。

これは、アイコスを加熱している際の、匂いが理由だと考えられています。

結論からすると加熱式タバコは紙巻きタバコよりは害が少ないが、より良いのは禁煙するという事ですね♪